変形性膝関節症で痛む「5つの部位」とは

こんにちは。
姿勢と歩行の整体院の渡辺と申します。

今回は、前回の記事に引き続き、「変形性膝関節症の痛みの部位」というテーマで記載していきます。

前回の記事はこちら↓

よく整形外科でレントゲン検査を受けて、「軟骨がすり減っていますね。だから膝が痛いんですよ。体重を減らしていきましょう」と言われませんか?

しかし、実は膝の軟骨には、痛みを感じる組織が無いんです。

びっくりですよね。

なので、軟骨自体が痛みを出しているわけではないんです。

では、膝のどこが痛いのか。どんなストレスがかかっているのか。どういう方向性で施術する必要があるのか。

それを記載していきます。

目次

変形性膝関節症で主に痛む「5つの部位」

では、変形性膝関節症で主に痛む5つの部位を記載し、以下でそれぞれについて詳しく記載していきます。

変形性膝関節症の痛みを発している部位とは、

  1. 膝蓋下脂肪体(しつがいかしぼうたい)
  2. 内側関節裂隙部の関節包(かんせつほう)
  3. 鵞足(がそく)
  4. 半膜様筋(はんまくようきん)
  5. 後外側支持機構(こうがいそくしじきこう)

主に以上の5つです。

以下では、それぞれを解説していきます。

①膝蓋下脂肪体(しつがいかしぼうたい)

膝蓋下脂肪体とは、膝のお皿の骨(膝蓋骨)の下にある脂肪のことです。(画像①を参照)

<画像①:膝蓋下脂肪体。膝を側面から見た図>

全ての関節は、「関節包(かんせつほう)」という組織に包まれています。

そして関節包の内側には「滑膜(かつまく)」という組織があり、膝蓋下脂肪体はこの「滑膜と関節包の間」に存在しています。

また、膝蓋下脂肪体は滑膜と関節包の間を、膝関節の曲げ伸ばしに伴ってかなりの距離を移動します。

膝蓋下脂肪体の役割としては、

  • 膝の曲げ伸ばしがスムーズに動くようにする
  • クッションのように衝撃を緩衝する
  • 膝蓋骨の動きを良くする

といった役割があります。

つまり、膝の曲げ伸ばしには欠かせない存在です。

膝の軟骨には「痛み」を感じるセンサーはありませんが、この脂肪体にはとてもたくさんセンサーがあります。

なので、何らかの原因で膝蓋下脂肪体に過剰な負荷が加わった際には、「痛み」を敏感に感じやすい組織といえます。

膝の内反変形と膝蓋下脂肪体にかかるストレス

膝の骨が変形して痛みを出す疾患である「変形性膝関節症」でみられる変形の1つに「膝の内反変形」があります。

これは、太ももの骨に対してスネの骨が内側に傾いてしまう変形で、外観的には「O脚」です。(下の画像②の中央に示す)

<画像②:膝の内反変形>

膝の内反変形が進行すると、膝の外側の滑膜と関節包が伸張され、この2つの組織間のスペースにも狭くなる圧力がかかります。

そのため、外側に位置する膝蓋下脂肪体はスペースが狭くなるため、内側に押し出されるように移動せざるを得なくなります。

そうなると、内側の膝蓋下脂肪体が大きく肥厚していきます。

報告によると、変形性膝関節症の方の膝を超音波検査(エコー検査)で観察したところ、内側にある脂肪体だけが健常者と比較して厚さが3倍以上にもなっていたとのことです。

また変形性膝関節症の方は、スネの骨が内側に傾くだけでなく、外側への回旋も伴っている場合が多いです。(「膝関節の外旋 」といいます)

そのため、内側に過剰に集まった膝蓋下脂肪体が外側にねじられることになります。 つまり、外側にねじれているんです。

その状態で滑膜と関節包の間を膝の曲げ伸ばしに伴って移動しなければいけないため、相当な摩擦の力がかかってしまうんです。

つまりまとめると、

STEP
膝が内反変形、外側が伸張され、圧力がかかることでスペースが狭くなる
STEP
外側の膝蓋下脂肪体が内側に押し出され、内側へ移動する
STEP
膝蓋下脂肪体が内側に過剰に集まってしまう
STEP
膝の曲げ伸ばしをする際、膝の内側に過剰に集まった脂肪体が関節包と滑膜の間を移動する時の摩擦が大きくなり、膝の内側に痛みが出やすい

ということです。

実際に変形性膝関節症と診断された方のお皿の骨(膝蓋骨)の動きは悪い場合が多いという印象があります。

変形性膝関節症は、関節の中に炎症をともなっているため、関節包自体の「繊維化(せんいか)」も生じると言われています。

「繊維化(せんいか)」とは

内臓などの組織を構成している結合組織(骨膜・筋膜・皮下組織など)と呼ばれる部分が異常に増えてしまうこと。

例えば、心臓の筋肉の心筋に繊維化が起きると、動悸などの症状が出ます。

まとめると、膝が内反変形することによって肥厚して、繊維化した膝蓋下脂肪体が、膝関節の外旋によって狭いスペースを移動し続けていれば、やがて痛みがでてくるということです。

膝蓋下脂肪体の痛みを減らすためには、内側に入り込んだ膝蓋下脂肪体の柔軟性や滑りを改善させるだけでなく、

膝蓋骨周囲の可動性をも改善することでスムーズな膝の屈伸を可能にし、加えて膝関節の外旋も修正することが必要です。

② 内側関節裂隙部の関節包(かんせつほう)

先ほども記載しましたが、関節包とは全ての関節にある「関節を袋のように包んでいる膜」のことです。

2重構造になっており、外側を「関節包」、内側を「滑膜」といいます。(下の画像②参照)

<画像②:関節の構造>

そして、「内側関節裂隙部」とは、膝関節の内側の隙間部分のことです。(下の画像③参照)

<画像③:右膝の内側関節裂隙部>

変形性膝関節症の方は基本的には内反変形しているため、内側の関節包は緩んでいる状態です。

緩んでいるのに内側関節裂隙部の関節包に痛みを感じるのはなぜでしょうか?

この部分の痛みは、変形性膝関節症の程度がひどくなればなるほど痛みが出やすくなると言われています。

私はその理由として、以下のストレスがかかるから痛みがでると考えています。

  1. 伸張される負荷
  2. 圧縮される負荷
  3. 摩擦の負荷

この3つの負荷がかかることで、内側の関節包に痛みがでます。

先ほども述べましたが、変形性膝関節症の方の多くは内反変形しているだけでなく、その内反変形の進行に伴ってスネの骨は強く外側へ回旋します。

この外旋によって、内側の関節包はギューッと外側にねじられるので、関節包には伸張される負荷がかかるわけです。

また、内反変形によって、内側の半月板(はんげつばん)には圧縮される力が強くなります。(半月板は下の画像④に示す)

<画像④:半月板>

内側の半月板が圧縮されると、その半月板が内側に飛び出してきて、ねじれられて張っている内側の関節包を圧縮してしまうストレスがかかるんです。

そして、忘れてはいけないのが、先ほど紹介した膝蓋下脂肪体です。

関節包のすぐ深層には、先ほど紹介した膝蓋下脂肪体があります。

変形性膝関節症の方の膝蓋下脂肪体は内側に多く集まっているため、「ねじられてパンパンに張っており、半月板に押されて圧縮されている関節包」に過剰な膝蓋下脂肪体の摩擦力もかかるんです。

めっちゃ痛そうじゃないですか?

3つも負荷がかかっているんです。

関節包の痛みを減らすためには、内側の関節包の正しい伸張性や滑りの改善だけでなく、膝関節の外旋、内側に過剰に集まった膝蓋下脂肪体へのアプローチが必要です。

③鵞足(がそく)

鵞足とは、スネの骨の内側につく3つの筋肉の総称で鵞鳥(ガチョウ)の足に似ているのでそう呼ばれます。(画像⑤参照)

<画像⑤:鵞足>

鵞足炎については以下の記事で紹介しております。

この鵞足の筋肉は、膝の内側の後ろから前に回り込んで付いているため、変形性膝関節症で多い内反変形では距離が縮まります。

そうなると引き伸ばされることはないため、痛みは出にくいはずです。

ではなぜ痛みがでるのでしょうか?

この理由は、先ほども出てきた膝関節に強い「外旋」が生じるからです。

変形性膝関節症の鵞足では、膝関節の外旋による伸張に加えて、その状態で膝を曲げ伸ばしすることによる摩擦負荷も生じます。

だから痛みが生じると考えています。

鵞足炎の改善症例は以下で紹介しています。

鵞足を構成する3つのどの筋肉が痛みに一番強く関わっているのかを判断することが重要です。

鵞足の痛みを減らすためには、まずは最も痛みを出している鵞足筋の柔軟性を改善し、膝関節の外旋負荷を減らすことが必要です。

④半膜様筋(はんまくようきん)

半膜様筋とは、骨盤から膝の後ろにかけて走り、主に膝を曲げたり、脚を後ろに引いたり、内側に回旋させたりする作用がある筋肉です。(画像⑥に示す)

<画像⑥:半膜様筋>

特にこの筋肉の一番下の方、膝の内側後ろあたりで痛みが出ます。

変形性膝関節症で膝の内反変形が進行すると、足に対してスネの骨が外側に傾く度合いが増えていきます

イメージ図を画像⑦に示します。

<画像⑦:右脚を前から見た図>

この状態になると、小指側に体重が乗りやすくなるため、扁平足のような形になり、足のアーチがつぶれてしまうんです。

「足のアーチ」についてはこちらの記事をご覧下さい。

足のアーチがつぶれてしまうと、歩くときに足が過剰に反った状態で地面を蹴り出してしまいます。

そうなると、スネの骨が外側にねじれる、つまり「膝関節の外旋を助長する力」が歩いているだけでかかってしまうんです。

変形性膝関節症の方、O脚の方を見ていると、扁平足になっている方が多いのはこのためです。

ここで重要なのが、半膜様筋が「脚を内側に回旋させる作用」があるということです。

なので膝関節が外旋していると脚も外側に回旋するため、特に歩行の際に地面を蹴り出すタイミングで半膜様筋が伸張される負荷がかかります。

また、この半膜様筋はふくらはぎの「腓腹筋」という筋肉と交差しています。(画像⑧で示す。水色の筋肉が半膜様筋、交差ポイントが黒い矢印です)

<画像⑧:半膜様筋(水色の筋肉)、交差ポイント(黒い矢印)>

この交差するポイントで半膜様筋と腓腹筋には強い摩擦負荷が生じます。

歩くことで何回も何回も強い摩擦負荷がかかることで筋肉同士の滑りが悪くなっていき、やがて硬くなります。

硬くなって動きが悪くなっている状態で、さらに膝が外旋しているため、半膜様筋の下の方が特に伸張されることになり、痛みが出てくるんです。

これが、内反変形で半膜様筋が緩んでいるように思えても半膜様筋に痛みがでやすい理由だと考えています。

半膜様筋の痛みを減らすためには、膝関節の外旋の改善だけでなく、半膜様筋と腓腹筋の滑走性の改善、歩行における足関節の動きの改善も行うことが必要です。

⑤後外側支持機構(こうがいそくしじきこう)

後外側支持機構とは、「膝の安定性を保つために存在している、膝の後外側にある靱帯・筋肉などの組織の総称」です。

場所は下の画像⑨に示します。

<画像⑨:右膝を後ろから見た図>

膝の内反変形が起こると、膝の外側が伸張されます。

それに加えて、先ほど述べた「変形性膝関節症の方で、扁平足を伴っている場合」だと、特に歩行の蹴り出しのタイミングで膝が外旋する力もかかるため、後外側支持機構はさらに伸張される負荷がかかり、痛みが出やすくなります。

特にこの膝の後外側部分には組織が密集しているため、ここ自体が硬くなり、滑りも悪くなりやすいです。

また、後外側支持機構だけでなく、膝の後ろ側に硬さがあると、膝をまっすぐに伸ばす動きの際に、膝が動く軸がおかしくなり、通常よりも「前」に移動してしまいます。

つまり、正しい軸で膝が動かないため、膝蓋下脂肪体など膝の前にある組織が挟み込まれるような負荷がかかって痛みが出やすくなります。

変形性膝関節症の方は、痛みと腫れを繰り返しているため、その過程で組織が繊維化し、硬さや滑走障害の一因になっていると考えています。

後外側支持機構の痛みを減らすためには、ここ自体の硬さや滑りの改善、膝関節の外旋を修正することが必要です。

まとめ

今回は、変形性膝関節症の痛みの部位と、その痛みを減らす方向性について記載しました。

一概に変形性膝関節症、膝の痛みと言っても痛みの出ている部位や程度は人によって全く違います。

また、どういう負荷が一番かかっているかも個人差が大きいです。

なのできちんと評価・検査をして、「どこが痛いのか」、「なぜ痛いのか」を把握することが大切です。

読んでいただき、ありがとうございました。

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