変形性膝関節症の痛みのメカニズム

こんにちは。
姿勢と歩行の整体院の渡辺と申します。

今回は、日本人の5人に1人が診断されるという「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」について、「変形性膝関節症の痛みのメカニズム」というテーマで記載していきます。

この記事の内容として、まずは「変形性膝関節症」とは何かを説明し、次に「私が考える変形性膝関節症・力学的な負荷・歩行への影響」を記載していきます。

目次

変形性膝関節症とはどんな病気か

まずは、変形性膝関節症について簡単に説明すると、

変形性膝関節症とは、様々な原因によって徐々に関節が変形し、関節に痛みや腫れをきたしている状態」のことです。

ここでいう「変形」は、多くの場合で「軟骨(なんこつ)」が減少することで起こります。

つまり、もっと簡単に変形性膝関節症をまとめると、「軟骨が減ることで変形が起こって、痛みや腫れが生じる病気」だといえます。

厚生労働省の推計によると、約2400万人以上の患者数がいるとされ、膝の痛みをきたす疾患では、おそらく最も多い病気だと考えられます。

本当に軟骨がすり減って痛みがでているのか

よくテレビや新聞の広告などで、「軟骨のすり減りにはこの商品を飲みましょう!」といった文言を見ますが、ここでよく考えてみてください。

たくさんの医療者が、「軟骨がすり減ると痛みがでてくる」と考えていますが、実はこの「軟骨」には、痛みを感じるセンサーがないんです。

軟骨は、関節の骨と骨が接する部分にあり、骨が接触する圧を分散するクッションの役割を果たしているため、痛みを感じるセンサーが敏感に痛みを感じ取ってしまうと、都合が悪いんです。

例えばジャンプの着地をイメージしてください。相当の負荷が膝にかかりますよね。

軟骨が痛みに敏感だと、気軽にジャンプしたり走ったりもできなくなります。

軟骨は痛みを感じない。「では、何の組織が痛いんですか?」と聞かれて、何人の医療者が明確な答えを持っているでしょうか?

実際に、私が学生時代から研修期間の間にたくさんの方にこの質問をしたのですが、明確に答えて下さった方はほんの一握りでした。

これはすごいことだと思いませんか?

だって、2400万人もの方がなっている病気なのに、多くの医療者が、「痛みを感じない軟骨が膝の痛みの原因」だと考えているんですよ。

そんなことがあっていいのでしょうか。

もっと言うと、たくさんの医療者が、「膝の何が痛いのか」を本当に理解していないのに、薬をだしたり施術をしているんです。

それは例えるなら、車が故障して、どこの部分が壊れているのかが分かっていないのに、なんとなく修理をしているのと同じ事です。

あり得ないと思いませんか?

あなたももし機会があれば、「膝の何の組織が痛いのか?」を医療者に質問してみて下さい。

残念ですが、はっきりと答えられる医療者はごくわずかだと分かるはずです。

私の「変形性膝関節症」の捉え方

例えばあなたがお腹が痛いとして病院に行くと、いろいろな検査を経て「腹膜炎」とか「肝炎」という病名がつきますね。

これらは痛みが出ている組織に対して病名がついています。

しかしここで大事なのは「変形性膝関節症」というのは、痛みが出ている組織を示した病名ではないということです。

つまり、膝が痛くて病院に行く患者さんの多くにこの病名がつけられますが、膝関節が変形しているから痛いわけではありません。

変形したことによって、過剰に伸ばされたり、圧縮されたりしている膝の組織があり、それらの組織にかかる負荷が一定のレベルを超えると、「痛み」が出てきます。

この負荷のレベルは、人それぞれです。

例えば、歩き始めて5分で膝が痛くなる人と、30分で痛みが出る人では、膝の状態が全く違います。

こう考えると、この「変形性膝関節症」は、膝関節の疾患で最も数が多いにもかかわらず、あくまでも保険病名であると私は考えています。

変形性膝関節症の痛みのメカニズムと力学的負荷

変形性膝関節症の方の大半は、特定の力学的負荷が加わることによって痛みが発生し、そして力学的負荷の積み重ねによって、徐々に変形が進行していきます。

ここでいう力学的負荷とは、「ある一定の方向に、同じような力がかかり続けている状態」です。

例えば、木の枝を毎日同じ方向に曲げていたら、徐々に曲がってきますよね。その「同じ方向に曲げる力」が、力学的負荷です。

変形性膝関節症において私が考える力学的負荷は以下の3つです。

  1. 膝関節の内反(いわゆるO脚のような変形)
  2. 膝関節の外旋(外にねじれている状態)
  3. 脛骨(スネの骨)が外にずれてしまっている状態

では、以下でそれぞれについて説明していきます。

膝関節の内反(いわゆるO脚のような変形)

1つ目の「膝関節の内反」とは、いわゆる「O脚」のような変形です。

O脚にもいろいろなパターンがありますが、ここでいうO脚は以下の画像のような状態です。

<画像①・O脚(一番左)>

この状態は、太ももの骨に対してスネの骨が内側に傾いているので、膝の内側が圧縮され、膝の外側が引き離されます

ここが重要です。

変形していなければ、体重を内側と外側で分散できるのですが、このように変形してしまうと、内側に通常よりも強い圧縮力がかかります。

そうなるとクッションとして存在する膝内側の軟骨が強く圧縮されるため、負荷がかかり続けます。

つまり、膝内側の軟骨にダメージが蓄積していきます。

「軟骨がすり減る」という表現をする医療者が多いですが、最近の研究報告では、軟骨は「すり減る」のではなく、代謝障害が起こり「溶けて減っていく」と考えられています。

結果的に膝内側の軟骨が減っていき、さらに変形が進行していく…という悪循環になってしまいます。

この悪循環を断ち切るため、整形外科では変形が高度になってしまう前、または進行して日常生活が困難になった場合などに、状態に応じて手術が行なわれます。

その中に「脛骨高位骨切り術」という手術があります。

これは、内側に傾いてしまったスネの骨(脛骨)の一部を切り取ることにより、O脚をまっすぐにする手術です。

この手術によってO脚が矯正されるため、内側にかかる圧縮力は減少します。

そのため、軟骨の内側の減少は、手術する前に比較するとかなり少なくなり、長期報告も良いと報告されています。

また、O脚を逆の変形の仕方の「X脚」(上記の画像①参照)では、内側の軟骨が外側より減ることはほとんどありません。

以上のことから、膝の内反による圧縮の負荷が変形性膝関節症の進行に関与していることは間違いないと私は考えています。

膝関節の外旋(外にねじれている状態)

2つ目の「膝関節の外旋(外にねじれている状態)」とは、太ももの骨に対して、スネの骨(脛骨)が外側に回旋している状態です。(下の画像②参照)

<画像②・左脚を前から見た図>

この状態は、変形性膝関節症の「痛み」に強く関わっています。

なぜなら、太ももの骨に対してスネの骨のが外側にねじれていると、特に「膝の内側」が過剰に引き伸ばされます。

この状態は非常に痛みがでやすいんです。

この膝の内側の状態を例えるなら、「輪ゴムを左右に思いっきり引っ張っている状態」です。

イメージしてみて下さい。今にも切れそうな感じがしますよね?

膝の内側がそうなっている状態で、階段の上り下りや走ったりすると、さらに負荷がかかり、組織が切れそうになり、痛みが出てくるんです。

※痛みを出す「組織」は大きく5つあります。次回の記事に詳しく記載します。

ただ、変形が強くても、痛みが無い方もいらっしゃいます。

その理由は、太ももの骨とスネの骨のねじれがなく、どちらも同じ方向に回旋している場合です。

あくまでも、太ももの骨とスネの骨の相対的な関係が重要で、位置を詳しく見極める事が大切です。

脛骨(スネの骨)が外にずれてしまっている状態

最後の3つ目は、「脛骨(スネの骨)が外にずれてしまっている状態」です。

イメージは、下の画像③をご覧下さい。

<画像③:スネの骨が外側へとズレているイメージ>

先ほど、スネの骨が外側にねじれていることを書きましたが、実は、スネの骨が外側に回旋しているだけでなく、外側にズレてしまっている方も多くいらっしゃいます。

私は、O脚には2つのパターンがあると考えていて、

・「太ももの骨とスネの骨がどちらも外側に曲がっているパターン」と、

・「太ももの骨はまっすぐだけど、スネの骨が外側に曲がっているパターン」です。

後者のパターンが、「脛骨(スネの骨)が外にずれてしまっている状態」です。

この「スネの骨の外側へのズレ」については、内容が記載してある書籍は少ない印象です。

なぜスネの骨が外側にズレてしまうのか、それは「足関節からの影響」が非常に多いと私は考えています。

なぜなら足関節の動きが悪いと、基本的にスネの骨が外側に傾いてしまうんです。

そして足関節は常に地面に接しているため、「歩くこと」と関係しています。

つまり足関節の動きが悪いと、歩いているときにいつもスネの骨が外側にズレる力がかかり続けるため、膝の変形が進行していきます。

このタイプの変形をしている方は、膝だけでなく足にもアプローチをすることが重要となります。

変形性膝関節症の方に扁平足が多い理由

上記の3つの力学的な負荷があると、結果としてO脚(膝の内反変形)が時間とともに進行し、痛みが出やすくなります。

また、膝の内反変形が進行していくと、足に対してスネの骨がどんどん外側に傾いていきます。

そうなると、小指側に体重がかかるため、そのままだと親指側が浮いてきてしまいます。

イメージがつきづらければ、立った姿勢から小指側に体重を乗せてみてください。

親指側が浮きそうになるのが分かると思います。

でも、立っている時に親指側が浮いている人はいませんね。

この理由は、スネの骨が外側に傾いて親指側が浮きそうになるのを防ぐため、足を扁平足のようにアーチをつぶして、親指側を地面につけているからです。

なので、変形性膝関節症の方は、扁平足になっていることが多いんです。

扁平足になると、歩行の際に地面をまっすぐに蹴れなくなるため、膝に回旋の力がかかってしまいます。

そうなると、また膝の変形を増大させてしまうという悪循環があります。

なので、変形性膝関節症の方は、膝だけでなく足もアプローチすることが重要です。

まとめ

今回は、「変形性膝関節症の痛みのメカニズムと力学的な負荷」というテーマで記載しました。

膝が変形する理由には3つのパターンがありました。

そして膝がきちんと動かなくなってしまうので、どこかに負担が集中し、痛みがでてくる。

「膝が痛いから、太ももの前の筋力をつけましょう」とよく言われますが、そもそも膝の動きが悪いところに筋力トレーニングをすると、痛みがひどくなる場合が多いです。

なので、まず膝がどういう状態なのかを見極めて、どういう力が膝にかかっているのかを確かめることが大切です。

次回の記事では、「膝の痛みを出す組織」について、詳しく記載していきます。

よければご覧下さい。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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