今回は、マラソンランナーの方に多い【ハムストリングスの肉ばなれ】の根本的な原因について解説します。
そして、やった方が良いセルフケアも紹介します。
まず結論として【ハムストリングスの肉ばなれの根本原因は「股関節の動きの悪さ」】です。
ハムストリングスの肉ばなれの予防にはストレッチや走り方を気をつけるように言われています。
が、本当にそうなのか?と私は思います。
だって一流の陸上選手やマラソン選手でも肉ばなれしているじゃないかと。
一流のアスリートがストレッチや走行フォームチェックを怠っているとは思えないんですよね。
そんな選手でもハムストリングスの肉ばなれをしているのは、必ず理由があるんじゃないかと私は考えています。
また、クライアントさんにランナーの方が多く、ハムストリングスの肉ばなれで悩んでいる方が多くいらっしゃると聞き、詳しく解説することにしました。
以下では、
- 股関節の動きとハムストリングスの肉ばなれの関係
- 肉ばなれしやすい人としにくい人の違いとは
- どうなれば肉ばなれしにくいのか
について詳しく解説します。
走る動作をするランナーや陸上選手に多い疾患が「ハムストリングスの肉ばなれ」です。
しかし、すべてのランナーに肉ばなれが起きるわけではないですよね?
そして、「片方の脚ばかり痛めやすい」ということはないですか?
ハムストリングスをストレッチして柔らかくしていれば肉ばなれを防げる。
走り方を気をつければ肉ばなれを防げる。と思っていませんか?
私はそう考えていません。
「いつも自分ばかり肉ばなれを起こしてしまう」
「いつも同じ側の脚が痛くなる」
と悩んでいる方には最適な内容です。ぜひご覧ください。
「ハムストリングス」は太もも裏側の筋肉のこと
まず「ハムストリングス」はどこにあり、どんな働きをしているのかを解説します。
「ハムストリングス」は太もも裏側の筋肉のこと
「ハムストリングス」は「太もも裏側の筋肉」のことです。
1つではなく、別々の3つの筋肉をまとめて「ハムストリングス」と呼ばれています。
下の画像をご覧ください。
左の図:後ろから見た図、右の図:右の太もも裏側を後ろから見た図です。
けっこう大きい筋肉ですよね。そして、めっちゃ長いです。
ハムストリングスはお尻の付け根から始まり、太もも裏側の内側・外側を通って、膝の両側までいきます。
では次に、ハムストリングスの作用をみていきます。
ハムストリングスの作用とは
筋肉の役割は、収縮して身体を動かす作用です。
ハムストリングスの作用は大きく分けて2つ。
- 膝(ひざ)を曲げる(膝の屈曲)
- 股関節を後ろにひく(股関節の伸展)
ハムストリングスが収縮すると、膝を曲げ、股関節を後ろにひきます。
これが走る動作と肉ばなれにどのように関わっているのか、掘り下げていきます。
肉ばなれは「筋肉が伸びた状態で収縮すると」起こる
肉ばなれは「筋肉が伸びた状態で収縮すると」起こります。
それはなぜかというと、筋肉というのは伸びた状態で収縮するときに最も負担がかかるからです。
たとえば、下の画像を見てください。
荷物を持ち上げるときに、右側の持ち上げ方の方が腰への負担が少ないですよ、というものです。
なぜかというと、左側は腰を前に曲げているので、腰の筋肉が伸びた状態で身体を持ち上げるから負担が大きいんです。
これと同じことがハムストリングスでも起こっています。
そもそも「肉ばなれ」とは、筋肉が傷ついたり断裂したりするケガのことです。
ただし筋肉すべてが完全に断裂しているわけではありません。
筋肉が部分的に断裂している状態です。
そして肉ばなれは、「筋肉が伸びた状態で強く収縮すると」起こります。
これを走る動作にあてはめると、下の画像の真ん中の選手の左足が接地した瞬間です。(青い丸の瞬間)
ハムストリングスの作用に、「股関節を後ろにひく」作用がありましたね。
つまりその逆である「股関節が前に曲がっている=脚を前にふり出している」ときは、ハムストリングスは伸びています。
その状態で地面に接地すると、膝が軽く曲がった状態を維持するためにハムストリングスは収縮します。
この地面に脚が接地するタイミングが、最もハムストリングスが肉ばなれしやすい瞬間です。
ハムストリングスの肉ばなれが起きやすい部位
ハムストリングスの肉ばなれが起きやすい部位は、「内側のハムストリングス」です。
ハムストリングスは内側と外側にありますが、圧倒的に内側の損傷が多いです。
これは、走る・歩く時の脚の動きに関係しています。
ハムストリングス肉ばなれが「内側」に多い理由
ハムストリングスの肉ばなれが内側に多い理由は、「脚を前にふりだすと内側が伸ばされやすいから」です。
下の画像を見てください。右脚を前にふりだしていますが、このポイントが重要です。
- 脚とともに骨盤も前にでる(左図の黒い矢印)
- 脚は前にまっすぐ出るように見えるが、実は外側に開く動きも含んでいる(右図の黒い矢印)
①右の骨盤が前にでる
②右脚はまっすぐ出ているように見えて、実は外側へ開く動きも含んでいます(黒い矢印)
右の骨盤が前にふりだされるので、脚はまっすぐ前にでているように見えて、実は外側に開く動きも含んでいます。
実際にやってみるとわかりますが、脚を外側に開いていくと、内ももがつっぱります。
外側に開いた状態で、脚を前にふりだすと、内ももの後ろ側がつっぱりますよね。
そのつっぱっている部分が、内側のハムストリングスです。
つまり接地したときの脚は、外側に開く動きも含むから、内側のハムストリングスの方が伸ばされやすいんです。
だからハムストリングスの肉ばなれでは外側ではなく内側を痛める方が多いんです。
ハムストリングスを肉ばなれは「股関節の動きが悪いこと」が根本原因
ここまでで、ハムストリングスは走る時に脚が接地した瞬間に最も負担がかかる。
そして、脚を前にふりだす動きは外側に脚を開く動きも含んでいる。
だからハムストリングスは内側が痛めやすいということでした。
ハムストリングスの肉ばなれの根本原因は【股関節の動きが悪いこと】です。
具体的には、以下の2つ。
- まっすぐ前に出す動き
- 外側に開く動き
この2つの動きの可動域がせまい状態で走ると、動きが出ないところを無理に動きをつくろうします。
そうなるとハムストリングスが過剰に伸ばされます。
その脚で走るから、肉ばなれをしやすいんです。
普通に走っているだけでもハムストリングスに負担がかかるのに、可動域がせまくなることにより、
余計にハムストリングスが伸ばされてしまいます。
一回の負荷は小さくても、走っていると何回も負荷が蓄積します。
その負荷が限界を超えたときに、筋肉が部分的に断裂してします。
だからハムストリングスが肉ばなれしてしまいます。
ハムストリングス肉ばなれをしにくい脚にするには
ハムストリングスの肉ばなれをしにくい脚にするには、【股関節の動きの悪さを改善すること】です。
先ほどの2つの動き。
- まっすぐ前に出す動き
- 外側に開く動き
この2つの動きの可動域がでれば、ハムストリングスに過剰に負担がかかる状態が改善します。
そうすれば走っているときに負荷が減るので、ハムストリングスの肉ばなれがしにくくなります。
やることは「太ももの両側の筋肉をやわらかくすること」
股関節の動きを最も制限しているのは、「太ももの両側の筋肉」です。
そこをやわらかくすれば、股関節の可動域が広がり、ハムストリングスへの負担が減ります。
下の図をごらんください。
左の図で【太ももの外側の筋肉】、右の図で【太ももの内側の筋肉】を示しています。
【太ももの外側の筋肉】
【太ももの内側の筋肉】
私の実感として、これらの筋肉が最もあなたの関節の動きを制限している可能性が高いです。
自宅でできるセルフケア
自宅でできる上記の筋肉のほぐし方・ストレッチ方法をお伝えします。
太ももの外側のほぐし方
太ももの外側の筋肉のほぐし方は、以下のようにやります。
もし画像のようなストレッチポールをお持ちなら、床とお身体の間にポールを入れてください。
もちお持ちでなければ、テニスボールのような少し硬めのボールを挟んでいただくと、ほぐしやすいと思います。
ただ、結構痛いため、あまり我慢はせず、「痛気持ちいい」くらいでやってください。
太ももの内側のストレッチ
太ももの内側は、ボールなどではほぐしづらいため、ストレッチをお伝えします。
この画像のように、少し膝を曲げて股関節を広げます。
それから体重を床に近づけるようにかけていくと、膝が外に開くように力がかかります。
それで内ももに伸びている「つっぱり感」があれば正しくストレッチできています。
ここで重要なのが、反動をつけないことです。
ゆっくり10秒程度伸ばし、ゆっくり戻すのを数回繰り返してください。
ただ、もしも太ももの内側が伸びずに股関節の外側に痛みなどがあれば、無理せず中止してください。
股関節を痛めるといけません。
最初よりも開く角度が広がってくれば、筋肉がやわらかくなっている証拠です。
【ハムストリングスの肉ばなれ】のまとめ
今回は、ハムストリングスの肉ばなれの根本的な原因について解説しました。
ハムストリングスは太ももの後ろにある筋肉です。
そして肉ばなれは筋肉が伸びた状態で強く収縮した時に損傷するので、走る時では地面に脚が接地した瞬間が最も痛めやすい。
ハムストリングス肉ばなれの根本原因は股関節の動きの悪さです。
それを改善するには太ももの両側の筋肉をやわらかくすることだとお伝えしました。
一般的には、痛めるハムストリングスだけをストレッチすることが重要と言われています。
しかし、本当の原因は動きの悪さです。
そこにアプローチすることで、あなたのハムストリングスにかかる負担が減り、良いコンディションを維持できます。
今からあなたの脚を良くするために、ぜひセルフケアから始めてみてください。