こんにちは。
姿勢と歩行の整体院の渡辺です。
今回は、「右のアキレス腱~ふくらはぎの筋肉が痛い【アキレス腱炎・足関節後方インピンジメントの疑い】」というクライアントさんの改善例を紹介します。
この方の痛みは、「足関節の底屈(ていくつ)の動きが悪いこと」が原因で、アキレス腱・足関節後方・ふくらはぎの筋肉に負担がかかりすぎたものでした。
なぜその部分に痛みがでていたのか、どうすれば改善したのかを記載していきます。
患者さんの情報と訴え
このクライアントさんは60代中盤の女性で、15年以上、毎月1週間程度スキューバダイビングを続けている方でした。
半年ほど前から、スキューバダイビングをやった後に右のアキレス腱・足関節後方・ふくらはぎの筋肉の部分に違和感を感じ、徐々に痛みに変わってきたとのことでした。
痛みがでていた部分を下の画像①に示します。
<画像①:痛みの出ていた部分>
主な症状としては、
- アキレス腱部・足関節後方部の痛み(黒丸と黒矢印)
- ふくらはぎの筋肉の痛みとこわばって硬くなってくる感覚(青丸と青矢印)
当初はアキレス腱部・足関節後方部の痛みの痛みがメインでしたが、最近ではふくらはぎの筋肉がこわばっているような、硬くなっているような感覚も出てきているとのことでした。
まずは整形外科を受診し画像検査を受けたとのことでしたが、医師から異常がないと言われ「アキレス腱炎」と診断されました。
それから様々な治療院に行ってみたとのことでしたが、どこの院でもふくらはぎの筋肉をほぐしたり、鍼をうってもらったが症状が変わらずに困っているとのことでした。
痛みが引かなくて困っているのはもちろんですが、とにかく今後スキューバダイビングができなくなるのが嫌だとのことでした。
では次に、この方の痛みの原因について記載していきます。
この方の痛みの原因
この方の痛みの原因は「足関節の底屈(ていくつ)の動きが悪いこと」でした。
足関節というのは、膝と足関節の間の部分である「下腿の骨」と、足の骨である「距骨」で構成されています。(下の画像②に示します)
<画像②:足関節の構成>
この足関節は、大きく分けて2つの動きをします。
その2つは、足を反らす「背屈(はいくつ)」と、足を下に曲げる「底屈(ていくつ)」です。
下の画像③をご覧ください。
<画像③:足関節の背屈(上に向かう方向)と底屈>
これらの動きです。
足の障害の多くの場合で、足の背屈がきれいにでないことが痛みの原因になります。
ただ今回のクライアントさんの場合は、底屈の可動域がでていませんでした。
では、なぜ底屈の可動性がでていないとアキレス腱・ふくらはぎの筋肉に負担がかかるのかを説明します。
底屈とアキレス腱・ふくらはぎの筋肉の関係
ふくらはぎにはたくさんの筋肉があります。
ここでは、最終的にアキレス腱になって踵の骨につく、「腓腹筋(ひふくきん)」と「ヒラメ筋」に絞って、お話しさせていただきます。
腓腹筋とヒラメ筋は以下の画像④に示します。
<画像④:右足の腓腹筋とヒラメ筋>
この腓腹筋とヒラメ筋の主な作用が、足関節の底屈です。
腓腹筋とヒラメ筋に力が入り筋肉が収縮すると、その力はアキレス腱を介して踵の骨に伝わり、足を下側に曲げます。
わかりやすい例では、つま先立ちです。
試しに、つま先立ちをしてみてください。
ふくらはぎが硬くなりませんか?
腓腹筋とヒラメ筋は体重を持ち上げるくらいパワーがある筋肉です。
では本来の働きである底屈の動きが制限されるとどうなるのかというと、
底屈の可動域がでないので、腓腹筋とヒラメ筋のを過剰に収縮させて、無理やり足関節を底屈させてきます。
歩行時では股関節で動きを代償することができるのですが、
特に階段を昇る動作では、足の逃げ場が少なく股関節で動きを代償しにくいため、負担が強くなります。
その状態で日々を過ごしていると、
足関節の底屈が出ない
↓
腓腹筋とヒラメ筋で無理やり足関節を底屈させる
↓
ふくらはぎの筋肉部が酷使されすぎてこわばってくる
このような悪循環になってしまいます。
では次に、底屈と足関節後方の痛みについて記載します。
底屈と足関節後方の痛み(足関節後方インピンジメント)
足関節の底屈が制限されていると、足関節後方に痛みを出しやすくなります。
それがなぜか説明します。
足関節の底屈時には、スネの骨に対して、足の骨が前に滑っていきます。
イメージとしては以下の画像⑤の青の矢印です。
<画像⑤:右足関節の底屈>
こんな感じで関節の中で前に滑っているんです。
ではなんらかの理由で、この「前に滑る動き」がでないとどうなるかというと、足関節の後方でぶつかってしまいます。(足関節後方インピンジメントといいます)
なので、アキレス腱部の部分やその奥で炎症が起こり、痛みがでてきます。
一度の大きな力ではないんですが、繰り返し足関節後方でぶつかることにより痛みが発生し、そのストレスの原因を解決しないと症状が慢性化してしまうんです。
次に、施術アプローチの要点についてまとめます。
施術アプローチの要点
施術アプローチの中心は、足関節の底屈の動きを良くしていくことでした。
特に今回のクライアントさんはダイビングでキック動作、つまり底屈動作を繰り返すので、必ず底屈がきれいに行えなければいけません。
足関節の底屈を制限する因子としては、
- 足関節前方の関節包
- 下腿前面の筋肉
- 足関節後方の脂肪体
などが挙げられます。
多くの場合で、筋肉そのものが硬くなっています。
このクライアントさんの場合でも、筋肉がガチガチに硬くなっていました。
硬くなっていた下腿前面の筋肉は以下の画像⑥に示します。
<画像⑥:右下腿前面の筋肉>
底屈すると痛みがあるため、無意識のうちに筋肉でかためていたことも、硬さに影響していたと考えます。
最初は筋肉が硬すぎて通常のストレッチではなかなか伸びなかったため、直接筋肉を緩める施術から始めていきました。
早くスキューバダイビングに復帰したいとのことで、自宅でも積極的にセルフケアを行っていただいた甲斐もあり、
柔軟性が改善してストレッチで筋肉が伸び始めた時には、クライアントさんと一緒に喜び合ったのが印象的でした。
底屈がきれいにでるにつれて、アキレス腱部の痛みとふくらはぎの筋肉のこわばりも減少していきました。
まとめ
今回は、足関節の底屈の動きが悪いことが原因で、アキレス腱部・足関節の後面・ふくらはぎの筋肉に負担がかかって痛みがでたクライアントさんの症例を紹介しました。
原因となる部位に正しくアプローチできていれば症状は改善しますが、原因ではないところをいくらストレッチしたりほぐしても、症状が改善することはありません。
私は、あなたの痛みの本当の原因をしっかりと見つけていきます。
当院では、あなたのお身体の状態に合わせて施術を行わせていただきます。
もし何かお困りのことがあれば、遠慮なくご相談ください。
今回も、読んでいただきありがとうございました。
名古屋市北区 地下鉄志賀本通駅から徒歩5分
姿勢と歩行の整体院 柔道整復師 渡辺雅之