【改善例紹介】「立っていると腰が痛くなってくる」

こんにちは。
姿勢と歩行の整体院の渡辺です。

今回は、立っていると徐々に腰が痛くなってくるという症例を紹介します。

目次

患者さんの情報と訴え

この方は50代中盤の女性で、1日5時間程度立った姿勢で仕事をされている方でした。

最初の数時間は耐えられるが、次第につらくなるため、つらくなるたびに休憩室で数分座って腰のストレッチをしてから再度お仕事に戻られるということでした。(痛みの出る部位は下の画像①の青丸部に示します)

<画像①:後ろから見ている図。青丸部が痛みの出ている部位(脊柱起立筋)>

この青丸の部分は筋肉で、背骨をまっすぐに伸ばす働きがあります。(脊柱起立筋といいます)

数十年前から腰に痛みがあり、マッサージや骨盤矯正に行きつつなんとかお仕事を続けてきましたが、最近休憩に行かなければいけない回数が増えてきたため、なんとかしたいとの訴えでした。

よくお話を伺うと、長距離を歩くことでも徐々に腰が重い感じがしてくるとのことでした。(足のしびれなどはなし)

その上で、姿勢・歩行・骨格の向きや関節可動域などの確認を行いました。

この方の問題点

この方の問題点は、太ももの前の部分の硬さでした。

この部分には、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)という、人間の筋肉中で最強の筋力を持つ筋肉があります。(下の画像②に示す)

<画像②:両脚を前から見ている図。青丸部が大腿四頭筋です>

この筋肉が硬くなると、股関節を後ろに引く動きが悪くなります。(下の画像③・④に示す)

<画像③:両脚を前から見た図。右の股関節を後ろに引く動きを示しています>


<画像④:右の脚を外側面から見た図>

この動きが阻害されるとどうなるかというと、立っている時に腰が反ってしまうことです。

具体的には、大腿四頭筋が硬くなることによって、骨盤が前の方向に引っ張られます。

つまり身体としては、骨盤より上が前かがみの姿勢にもっていかれるということです。(下の画像⑤に示す)

<画像⑤:骨盤が前に引っ張られると上半身も前傾姿勢にもっていかれます>

この姿勢は、簡単に言うとお辞儀をした姿勢です。

しかし、そんな姿勢をした人はそうそういませんよね?

人間は目線を地面と平行に保っています。

つまり、どこかで体を後ろに反らさないといけなくなります。

どこで反ってくると思いますか?

そうです、多くの場合に腰で反ってきます。

人体の構造上、骨盤のすぐ上で反ったほうが動きを補いやすいため、腰で反ります。

ここで、この方の訴えである画像①の筋肉をもう一度ご覧ください。

この筋肉は、背骨を骨盤から首の後ろまで走り、主に体を反らす作用を持つ「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」と呼ばれる筋肉です。

その名の通り、「脊柱」=「背骨」を「起立させる」、つまり背中をまっすぐに持ち上げる働きのある筋肉です。

背中をぐっと反ってみてください。背骨の両側についている脊柱起立筋に力が入るのが感じられると思います。

つまりこの方は、立っているだけで常に背中の筋肉に力が入った状態ということです。

そして多くあることですが、この方は、「小さいころから、背筋(せすじ)をピンとしなさいと言われており、この姿勢がクセになっていました」とおっしゃっていました。

太ももの前が硬いことで、骨盤が前に傾き、股関節が後ろにうまく動けない状態で背筋をピンと張るということは、ただでさえ背中の筋肉に力が入っている状態なのに、さらにそこから背中の筋肉に力を入れることになります。

つまり、過剰に筋力トレーニングをしているようなものです。

なので、背中の筋肉が疲労が限界に達して痛みが出てくるのは当然です

お一人お一人お身体の状態は違うので、一概には言えませんが、このような方は、腰のマッサージをしても症状が根本から改善することはありません。

ここまで読んでくださった方ならお分かりかと思いますが、腰のマッサージをすることはただ筋力トレーニングをして疲れた筋肉をほぐしているだけだからです。

マッサージをすることで循環が良くなり疲労物質が流れるため、一時的には楽になったと感じるかもしれませんが、立った瞬間に再び背中の筋肉のトレーニングが始まるだけです。

そして、この方は長距離を歩くことでも徐々に腰に重い感じがしてくるとの訴えもありました。

立っているだけで腰に負担がかかっているのですから、歩いたらさらに負荷は増大します。

よく、「大股で歩くと身体に良い」ということが言われますが、股関節の可動性が制限されている方が大股で歩くと、さらに腰の痛みが増してくるため注意が必要です。

施術アプローチの要点

なのでこの方への施術としては、

  • 太ももの前の筋肉の硬さをとること

を中心に行い、柔軟性が改善してきたら、

  • 背中の筋肉に力を入れなくてもいいようなお身体にしていくこと

を中心に行いました。

※大腿四頭筋のストレッチの方法については、別の記事で記載しています。記事の最後にリンクを貼っておきますので、気になる方はごらんください。

まとめ

この方の症状は数十年前からということでしたが、このように経過が長い方は硬さが強いことはもちろんですが、正しいお身体の使い方を忘れてしまっています。

この方は、背中に筋肉に力を入れることを習慣的に行っていたため、反対側の腹筋を鍛えることももちろん必要ですが、力を入れなくてもよい状態をお身体に学習させる必要があります。

そうなると、上半身や足など患部より離れた部分へのアプローチが必要になるため、根本的なお身体の状態の改善にはかなりの時間がかかります。

それをご理解いただいたうえで、根気強くセルフケアにも取り組んでいただき、症状の改善が認められ、立っている時や歩行での足への荷重のかかり方の変化なども感じていただけるまでになりました。

患部の症状の軽減だけでなく、全身の状態を評価しながらあなただけの施術を行います。

何かあれば遠慮なくご相談ください。

大腿四頭筋のストレッチ方法はこちらの記事↓をごらんください。

今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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【過去の記事で、膝関節・足関節を中心に、腰・股関節など各関節の記事をまとめております。気になる方はご覧ください】

・膝関節の記事はこちらから→「膝関節の痛み・症例」の記事一覧

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